マウスピース矯正とワイヤー矯正のメリット・デメリット

私は歯列矯正経験者なのですが(従来型のブラケットを使うワイヤー矯正とマウスピースタイプ、両方経験者です)、矯正前にはどちらにするかで悩みました。

双方のタイプの経験者ということで、矯正前に知っておきたかったメリット、デメリットを比較してまとめてみました。

ちなみに
マウスピース矯正とは透明のマウスピースを使って矯正する方法(インビザラインが代表的)、
ワイヤー矯正とは従来からあるブラケット(ひとつひとつの歯に取りつけるボタンのようなもの)にワイヤーを通して矯正していく方法です。

ワイヤー矯正にはブラケットやワイヤーをつける位置によって、一般的な表側矯正(唇側矯正)、裏側矯正(舌側矯正)、目立つ上顎のみ裏側矯正のハーフリンガル矯正があります。
最近ではワイヤーやブラケットもThe 金属!というメタル感あふれるものではなく、白や透明のワイヤー・ブラケットを取り扱う医院も多いようです。

1.マウスピース矯正

メリット

①目立たない

マウスピース自体はほぼ透明で、質感もツルツルすぎずザラザラすぎないため、つけていても目立ちません。
というか、歯を相当注視しない限り他人からはわからないと思います。

ただしこれにも個人差があって、「光が当たると変にテカる! 不自然!」「これなら表は自然の歯そのものの裏側矯正を選べばよかった」と感じる方もおられるようです。

②舌など口内に傷ができにくい

マウスピースは上述のように表面がすべすべした素材でできており、ワイヤーとブラケットを使う矯正のように凹凸がそこまでありません。
なので「矯正器具が当たって口の中が傷だらけ!」ということは起きづらくなっています。

③食事や歯磨きがしやすい

飲食の際は取り外すため、ワイヤー矯正のように「矯正器具に食べ物がひっかかって食べづらい」ということは基本的にありません。
同様に、歯磨きもワイヤー矯正よりはしやすいです。

デメリット

①一日に最低20時間の装着が必要

個人的に感じた一番のデメリットがこれです。

マウスピース矯正では、歯を動かす装置であるマウスピースを患者側で取り外しできてしまうため、患者が日々頑張ってできる限り長時間マウスピースをつける必要があります。

そして、一日の目標装着時間20~22時間です。
一日は24時間しかないので、外せる時間最大で一日四時間

もちろんごくまれにならこれを超えても大丈夫ですが、平常時は毎日20~22時間以上つけないと歯が動かず、治療が進みません。
もちろん歯科医院の先生にもバレます。

②装着の前後にお手洗いへ行く必要がある

しかも、マウスピースはある意味入れ歯のようなものなので、外すためにはお手洗い(洗面台)へ行く必要があります。
人前で外すのはとてもみっともないですし、恥ずかしいだけでなく、外したマウスピースは衛生上、最低限でも軽く水洗いしておくのが安心なためです(口内って細菌すごいですよね…マウスピース用ポリデントなども売られています)。

また、食後は歯をキレイに磨いてからでないと装着できず、再度お手洗いに行く必要があります。
よって、マウスピースを外せる時間すべてが食事に使えるわけではなく、お手洗いに行くまでの時間、お手洗いで外したマウスピースを洗ったり歯磨きしたりという時間まで含まれます。

こう書くと「細かく気にしすぎなんじゃないの?」と思われる方も多いと思うのですが、一人でのサッと摂る食事はともかく、ランチやディナーで人と一緒になることが多い方は要注意です。

③装着時に「チューイー」を噛む必要があることもある

これは医院の方針やその人の歯の状態にもよるのですが、一般的にはマウスピース(アライナー)装着後、「チューイー」と呼ばれる三センチほどの小さな丸い棒のようなものを噛むよう指示されます。

こちらアメリAmazonの商品画像ですが、こんな感じでアライナーをつけた後に噛み、歯とマウスピースを密着させます。噛み心地は非常に硬くて弾力のあるゴムのような感じ。
具体的な指示は医院により異なるのですが、「棒を少しずつ動かして歯列を一周したらそれで良いよ~」というところもあれば、「装着後は10分、新しいアライナーに交換した時は30分噛んでね~」という医院も。

前者のような指示であればいいのですが、毎回装着後に10分噛むよう指示されると地味に結構負担になるように思います。
弾力があってかなり固いため噛む度キュッキュと音がして、お手洗いで噛んでいると「あの人何してるのかしら?」という目で見られているような気がして時間だけでなく精神的にも大変です(気にしすぎでしょうが)。

④装着時は「常温の水」しか飲めない

更に、マウスピースを装着している間は常温の水しか飲めません。
ガムやアメをはじめとして食事厳禁なのはもちろん、飲み物にも制限があります。

まず、マウスピースは高温に弱いため(変形してしまう)、熱い飲み物は飲めません。
コーヒーや紅茶、緑茶やカフェラテなど熱いものは厳禁です。

また甘いもの、炭酸飲料など味のあるものも虫歯や着色などの原因になるため一切禁止です。
結局、装着中は常温もしくは冷たい水しか飲めないということになります。
料理していて味見、デパ地下で試食、寒い冬に帰宅して紅茶、仕事しながらコーヒー、装着中は全部ダメです。

一方、ワイヤー矯正ならいつでもなんでも飲めます(早く歯磨きした方がいいのはもちろんですが…)。
友達とゆっくり時間をかけて食事したい、飲み会が多い、ゆっくりお茶するのが趣味といった方にマウスピース矯正は向きません。

④歯に凹凸のある部品をつけたり、顎間ゴムを使うことがある

目立たなさが一番の売りのマウスピース矯正ですが、歯とマウスピースがより密着するようにするため、アタッチメントと呼ばれる白い突起をつけることがあります。
この突起はマウスピース本体と異なり、つけっぱなしです。

この凹凸が個人的には結構目立つのでは?という気がします。
つける個数や位置は人によりますが、前歯の目立つ場所に15個つけられたという方もいらっしゃるようです。

また、歯並びによっては顎間ゴムというものを使います。
これは上の歯と下の歯の間にかけるゴムのことで、マウスピース矯正の場合には上下のマウスピースに切れ込みを入れ、そこに乳白色のゴムをかけます。

ちょっとこの説明だと分かりづらいかと思うのですが、是非「顎間ゴム インビザライン」などで検索してみて下さい。

個人的には結構審美性に響くというか、知らずにマウスピース矯正を選んでこれをつけるよう指示されたら「どうせこんなのつけるなら普通の矯正器具でよかった!」と思ってしまうかな?と思います。
ちなみに、顎間ゴム自体はマウスピース矯正でも普通のワイヤー矯正でも使う可能性があります。

⑤どの方式を選んでも、リテーナー期間には似たような制限がある

矯正方法を問わず、矯正には①矯正装置で歯を動かす段階(動的期間)②保定装置で動かした歯を固定する段階(保定期間)の二段階があります。

そしてその保定期間に使う歯の固定のための道具が、リテーナー(保定装置)です。
このリテーナーにはさまざまな種類がありますが、長時間の装着と装着中の飲食禁止(常温か冷たい水のみ)というルールはほぼ共通しています。

すると、マウスピース矯正を選んだ場合、ワイヤー矯正に比べて飲食に制限のある期間が長くなることになります。
ワイヤー矯正なら前述の通り、早く歯を磨くべきことはもちろんですが、いつでも何でも食べられますし、飲めます。食事前にお手洗いに行くわずらわしさもありません。

「どうせ飲食に制限のある期間があるならその期間が長くても一緒」と考えるか、「どうせ飲食に制限が出てしまうなら、少しでもその期間を短くしたい!」と考えるか、人によって意見が分かれそうです。

ちなみにリテーナーにも目立たない透明マウスピースタイプがありますが、これはワイヤー矯正を終えた方でも主治医の許可と医院での取り扱いがあれば装着可能です。
マウスピース矯正をしないとリテーナーもマウスピースタイプは選べない、というわけでは決してありません。

⑥そもそも対象となる症例が限られる

最初に言えと言われそうですが、マウスピースタイプの矯正は動かし方などに限りがあるようで、対象となる症例がワイヤー矯正よりも狭いです。

また、マウスピースでもできるけれど仕上がりはワイヤーに劣るという場合もあるようです。この辺りは矯正治療の医療従事者でない私は詳しくないので、矯正をすると決めたらいろいろな先生に話を伺ってみてください。

2.ワイヤー矯正

メリット

①マウスピースのように対象者が限られない

マウスピース矯正と異なり、基本的にどんな人でも矯正が受けられます。
最近登場したマウスピース矯正と異なり、基本的に対象者に制限はありません。

②目立ちにくい器具が多数出てきている

ワイヤー矯正というとどうしても目立つイメージがありますが、最近ではホワイトワイヤー・ブラケットなど透明や白の素材が多数出ているのでそこまで目立ちません。
また、裏側矯正にしてしまえば、基本的に装置は完全に人からは見えなくなります。

もし目立ちにくさということを気にして方法を選ばれる方は、画像検索を検索するだけでなく、実際に歯科医院へ相談に行ってマウスピースの現物や、目立たないワイヤーやブラケットをつけた歯の模型を見せていただくことをお勧めします。

個人的には模型だと全面が見えているので多少気になりますが、実際に人がつけるとそこまで気にならないなと思いました。
普段は口を閉じていますし、話すときも日本人はそこまで大きく口を動かしていないからかな?と思います。

③食べ物・飲み物に制限がない

先ほどのマウスピース矯正の話の裏返しですが、食べ物・飲み物に特に制限はありません。
また、もちろん装着時間というようなものもなく(第一専用の機械を持った医院でしか取り外せません)、食前にお手洗いに行く必要もないので、飲み会やランチでもゆったり食事ができます。

デメリット

①口内に器具が当たって傷ができる

器具には凹凸があるので、装置に慣れるまでしばらくの間は表側矯正なら唇の裏、裏側矯正なら舌に傷ができることがあります。
また、初期は歯列がきれいになってくると歯のカーブの凹凸が減り、余ったワイヤーが奥歯の辺りの頬に刺さることも…。

口内炎がいくつもできるとストレスですし、地味に痛いです。
ただし、対処法がないわけではなく、器具の凹凸をカバーするガムのようなもの(ワックス)、伸びてきたワイヤーを歯科医院で切ってもらうなどでマシになります。

②装置の関係で食べづらい物がある

でこぼこした装置がついているので、繊維質の食べ物などは大変食べづらくなります。
個人的に一番やっかいだったのは、ほうれん草の繊維質でした。

ただし、私はこれで逆に歯磨きが丁寧になり、食後すぐに歯磨きをする習慣がつきました。

③歯磨きが面倒

装置がついて表面積が増えている上、装置はでこぼこしているので歯磨きは面倒です。
細かい部分が多いため、普通の歯ブラシだけでは綺麗に磨けません。

私は極小サイズの歯ブラシ(ワンタフトブラシ)、ワイヤーの下やブラケットの側面を磨くための歯間ブラシSサイズを愛用していました。

フロスがワイヤーに阻まれてきちんと下まで届かなくなるので、更にフロスレッダー(糸通しのようなもの)も使うべきなのですが、面倒でつい普通のフロスのみでサボってしまいました…。これは絶対にやめましょう。

 

思いつくままに軽くまとめてみましたが、「一日20時間装着を守れるか」「食事時以外に一切の飲食をしないでいられるか(常温の水除く)」をまず考えることをお勧めします。